薬剤師の星谷です。
緊急事態宣言が明けやや落ち着きを取り戻しつつある社会情勢かと存じますが、薬局や医療機関においてはリスクと隣り合わせの勤務を強いられている方が多いかと存じます。
ご承知の通りコロナの影響は景気面にも及んでおり、職種や業態によっては失業や倒産が出始めているのも事実です。薬局においても軽疾患患者様の来局が減り、特に花粉症患者様が多かった薬局においては売り上げの目減りが大きいと言われております。
薬局に限らず企業の経営状態が悪化するともろに影響を受けるのは雇用情勢になります。売り上げが立たないなら経費として人件費を削る、というのが世の常なんですね…。例に漏れずコロナの影響を受けて薬剤師の転職市場も大きく変化しております。
今回はキャディカル薬剤師のアドバイザーとして求職者対応をしているときに感じている点も含めて、直近で大きく変化した薬剤師転職市場についてお伝えしたいと思います。
目次
コロナの影響
患者さんも外出自粛
どの薬局からも“患者さんが減っている”と伺います。コロナ院内感染のニュースも大々的に流れ、患者さんが受診を控えたり、長期処方になり来局頻度も減っています。
私の知人も高血圧で定期受診していたのですが、「怖いから病院行かない→薬飲まない」という危険な判断をしていました。必要な受診を控えてしまう間違った外出自粛も起きています。
病院では予定入院、手術が延期になり経営に影響がでています。コロナ患者を受け入れる、受け入れないにかかわらず医療業界全体の経営は赤字となっています。(日病・全日病・医法協調査追加報告より)
オンライン診療、その後は……。
患者さんの視点で考えると、オンライン診療は感染リスクもなくなりますし、診察までの待ち時間もストレスなくメリットが多く感じます。しかしオンライン服薬指導では、実際に薬という物の受け渡しがあるので、受け取りの時間を考えると来局したほうが早い事もあります。
では感染リスクを減らし、時短で薬を受け取るにはどのような方法があるか。いつも利用している混雑している門前薬局での受け取りは少なくなるでしょう。自宅から行ける範囲でいつでも連絡が取れる関係性のある薬局が選ばれるのではないでしょうか。
コロナの影響を受けて処方箋の流れが大きく変わってくることが予想されます。また病院受診控えで健康相談OTC相談が増えたという薬局もあります。ますますかかりつけ薬剤師、地域に根付いた薬局が求められるのではないでしょうか。
絶好調!?ドラックストア
少し前まで、マスク不足!消毒薬不足!等でドラックストア前に長蛇の列ができているというニュースが毎日のように流れていました。ドラックストア業界はコロナ禍でも売上増になった企業が多いです。
しかし、オフィス立地店舗での売上減や、外出自粛で化粧品が売上減、訪日外国人(インバウンド)がなくなり売上減とプラス要因だけではありません。またドラックストア業界は今後も統合再編成が続いていくと予想されています。
求人状況はどう変わってきた?
パート求人の減少傾向
特に子育て世代に人気のある日中だけのパート求人は充足傾向でなかなか見つかりにくくなっています。またフルパート求人も減少傾向にあります。フルパートならば正社員になってしっかり勤務してほしい、と考える企業が多いように見受けられます。
“夕方~、土日曜祭日も出勤可” であれば、平均より高時給での募集は続いています。
派遣も減少傾向
コロナの影響で“処方箋枚数がかなり減っている” “パートさんの出勤時間を減らしている”というような状態で派遣募集を休止される企業様が多くなっています。
コロナの終息時期は予想ができませんので、派遣求人はしばらく先まで不安定な状態が続くと考えられます。
正社員求人は?
大手企業は新卒採用で各店とも充足傾向、中小企業では採用に慎重になっている傾向がみられます。
採用担当者に話を聞くと以前は急に人がいなくなった時のために人員を少し多めに確保しておこうと考えるもありましたが、コロナの影響で利益が減っているので、今は“退職者が出た時のみ採用する“”面接を決める時も応募してくる方のスキルをしっかり見極める”とのお話で正社員の求人も増加する要因は見られません。
また、以前のような破格な高額求人は一定の地方を除き出にくくなっています。
調剤報酬改定で見える求められるスキル
一般的な職種に比べると薬剤師はまだ売り手市場が続くと言われているようですが、希望地域や働き方を選ぶと充足傾向が今後ますます進んでいくと考えられます。
今回の調剤報酬改定で薬局、薬剤師の今後を弊社研修担当者は以下のように分析しています。
まず「調剤基本料1」のままでいる薬局では、今後、地域支援体制加算を取りに行く必要がありますので、そのために在宅を充実させる。そして、医療機関との連携が求められますので、そこを頑張っていく必要があります。 また、下がった部分を補充するために新たな加算を取っていく必要がありますので、服薬指導の充実、服用後のフォロー、調剤後のフォロー、在宅への積極的な進出、ポリファーマシー対策などの加算を取っていく、と。 国の方針としては、薬剤師はどんどん臨床の場に出ていっていろんな職種と協力して患者に対応していきましょうね、という感じになります。 したがって今後、というかこれまでもさんざん言われてきたことではありますが、薬剤師にはコミュニケーション能力が必須です。服薬指導であったり在宅であったり、どれでもそうですが、コミュニケーションがとれないような薬剤師は今後、転職や就職がさらに難しくなるでしょう。 |
引用:2020年、調剤報酬改定のポイントと変更点まとめ
“コミュニケーション能力“ “在宅経験” この2つが今後ますます重要視されるスキルだと考えます。条件だけを重視し、スキルが高められない転職は危険です。
まとめ
というわけで、コロナの影響も含めた直近の薬剤師転職市場についてざっとまとめてみました。
キーポイントは下記4点になります。
- コロナの影響で医療業界全体が赤字傾向
- 薬剤師の転職事情は厳しくなっている
- 転職するときは、条件重視<スキル重視 将来を見据えて考える
- “コミュニケーション能力“ “在宅経験”を鍛えよう!
今後、暫くの間は不景気が続くと予想されます。先にもお伝えした通り、経営状態の悪化は雇用に直接的に影響します。
厳しく聞こえるお話かもしれませんが、必要とされる薬剤師になれるか、不要と思われる薬剤師になってしまうかは、皆さんが今市場が求めているスキルを身につけられているかにかかっています。
日々の仕事の中で、多くの薬剤師さんの転職に携わらせていただいておりますが、ルーティン化した調剤業務をただこなすだけの薬剤師では正直厳しい時代になってきております。是非ご自身の先を見据えて、新たなスキルの獲得に一歩踏み出していただきたいと考えます。
そんなこと言ったってなにしたら良いの?それってどうやって身につけるの?など悩むことも多いかと思います。お困りのことがありましたら弊社お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください!