待望の山本雄一郎先生による連載がスタートします。初回は、現役の薬剤師からのお悩み相談に山本雄一郎先生にご回答いただきます。

薬局薬剤師(35歳、男性)のAと申します。
いまの薬局に新卒で入社してもうかれこれ10年になりますが、仕事は単調で、繰り返し作業のような業務が多く、このままでいいのだろうかと悩んでいます。
学会に参加するたびに病院への転職を考えてしまう一方で、給与や家族のことを考えると今の薬局を辞めるという決断もできません。
なにかアドバイスをいただけると幸いです。
Aさん、こんばんは(深夜にキーボードを叩いています)。初回からかなり重い内容で、やや面食らっている山本です。
さて、ご相談の件ですが、病院への転職を考えることもあるがそれは生活を考えるとできない、というのはAさんのなかで、すでに決定しているようにお見受けします。こちらとしても、そういった現実的なことを無視して、「スキルアップのために病院の世界に飛び込んでみるのもいいと思いますよ」なんて軽はずみなことを口にできるはずもありません。
ということで、ここではいまの働き方を取り上げてみたいと思います。的外れな内容でしたらすみません。働き方を考えるときには、その中身としての「仕事(work)」と「労働(labor)」のバランスが大切だ、と僕は常々思っています。もっとかみ砕いていえば、「じぶんがしたいこと」と「じぶんがしないといけないこと」のバランスでしょうか。また、当然ながら、誰もが後者をなくすことはできません。
たとえば、俳優をめざしている劇団員が、それだけでは生きていけないからバイトを掛け持ちしているとします。前者は「仕事」であり「生きがい」で、後者は「労働」であり「苦役」といってもいいでしょう。翻ってAさんは、学会で目にする病院薬剤師の業務を「仕事」、そして単調で繰り返し作業のようないまの薬局での業務を「労働」と捉えているように見えます。が、はたして本当にそうでしょうか。それが病院、薬局といった場所の違いに起因するとは僕には到底思えません。
調剤指針の最初のページに調剤の概念が示されています。その一部を紹介しますと、「診断に基づいて指示された薬物療法を患者に対して個別最適化を行い実施する」とあります。Aさんの薬局に持ち込まれる処方箋は、薬剤師が介入する余地がないほどに、その薬物療法が個別最適化されているのでしょうか。まずはそこから考えてみるのはいかがでしょう。「薬剤師として目の前の患者さんにできることはないだろうか」「その患者さんの薬は個別最適化されたものであると胸を張って言えるだろうか」と。そして、患者さんと並走している限り、状況が、薬が、そしてガイドラインといったものが変わっていくわけですから、その都度、個別最適化というものを考えないといけません。薬局の業務もそういった意味ではけっこう大変で、やりがいのある「仕事」だと思うのです。
学会に参加するといった外への視線も立派ですが、そこで学んだことを中に持ち帰ることも同じくらい、いや、それ以上に大切なことです。ぜひ、Aさんの「労働」を「仕事」に変えるべく、Aさんなりのやり方を模索してみてください。
山本 雄一郎(やまもと ゆういちろう)先生は、日本の薬局薬学界で活躍する薬剤師で、現在 株式会社ファルマウニオン代表取締役 を務める経営者・教育者です。
著書一例:
誰も教えてくれなかった 実践薬学管理
著者:山本雄一郎
頁数:216頁
定価:3,740円(本体3,400円+税)
発刊:2022年11月
ISBN:978-4-8407-5468-2
ソクラテスが贈る若手薬剤師研修テキスト: ~薬局薬剤師として輝くために~
著者:山本雄一郎
頁数:88頁
定価:1,650円(税込)
発刊:2024年11月
ISBN-13 : 979-8345515259











