Vol.2 2026年3月 現役の薬剤師さんからのキャリア相談

目次

大好評の山本雄一郎先生が現役の薬剤師からのお悩み相談にご回答するコーナーです。

Q. 薬剤師 Bさん

はじめまして、薬局薬剤師のBと申します(40歳、女性)。
比較的忙しい店舗に勤務しているうえ、管理業務もあり、日々忙しく充実した毎日を過ごしています。休憩中も薬学の雑誌を手に取り、少しでも最新の知識に触れようとはしているものの、人手不足なのもあって、なかなか勉強の時間が捻出できません。なにか効率的にスキルアップするための勉強方法をご存じでしたら教えてほしいです。よろしくお願いいたします。


A. 山本先生

Bさん、こんばんは。いいじゃない、とつい口に出てしまった山本です。Bさんは管理薬剤師(もしくは店長)で、患者さんも多く、ということはスタッフもそれなりにいて、マネジメント業務もこなしつつ、そしてそして、日経DIみたいな雑誌が休憩の場にあって、前向きに勉強しようとしている。「日々忙しく充実した毎日を過ごしています」なんてなかなか言えません(僕だけだったらすみません)。それは素晴らしいことだと思います。僕からのアドバイスも不要のように思えますが、気になった個所を少しだけ。

まずは「効率的」という言葉について。「効率的」をAIに尋ねてみますと、使った労力(時間、コスト、エネルギーなど)に対して、得られた結果が大きいことを指す、とのことなので、それは「無駄がない」もしくは「コスパがよい」、そういった表現にも変換できそうです。つまり、ゴールへまっすぐ向かっている状態ということになるでしょうか。

ここで一つ問題が生じます。ゴールへまっすぐ向かう、そのためにはまずゴールの設定が必要となります。たとえば、Bさんにはゴールたりうるロールモデルがおりますでしょうか。もしくは言葉にはできなくても、この方向でよいという直観はおありでしょうか。じつはそういったことが案外大切です。チェーホフの手帖にはこう示されています。

“君が「前へ」と叫ぶ時には、前とはどっちのことなのか、必ずその方角を示し給え”

——チェーホフ(神西清・訳):チェーホフの手帖. 新潮文庫、p169、1958

また、ゴールへまっすぐ向かう最短の道というのは、たとえば高低差があったり、整備されていなかったりで、その道を通ることは難しいということが往々にしてあるものです。一見遠回りでも、曲がり角がある道のほうが早く目的地に着くこともある。そして、「まっすぐの道をゆくように、曲がり角をゆくことはできない」(@長田弘)わけです。

だから、僕は効率を求めて勉強に取り組む必要はないんじゃないか、と思っています。具体的な患者さんの役に立ちたいときや純粋な薬学の疑問に遭遇したとき、そんなときこそが曲がり角で、ひょっとしたら曲がり角のほうが多いのかもしれない。そして、そんなときは時間がかかるもの、いや時間をかけるべきなんだと思います。急がば回れです。この時間が捻出できない人手不足については経営者にご相談いただくしかありません。

もう一つ。人の言葉ばかりで恐縮ですが、モンテーニュは安易な改革について批判しています。「どこか一部分が外れてしまっても、つっかい棒をすることが可能ではないか」と、現在の習慣を捨てる必要はないと指摘しています。休憩しながら薬学の雑誌を手にすることもチリ積もです。そういったことをぜひ継続していってほしいと思います。

山本 雄一郎(やまもと ゆういちろう)先生は、日本の薬局薬学界で活躍する薬剤師で、現在 株式会社ファルマウニオン代表取締役 を務める経営者・教育者です。

著書一例:
誰も教えてくれなかった 実践薬学管理
著者:山本雄一郎
頁数:216頁
定価:3,740円(本体3,400円+税)
発刊:2022年11月
ISBN:978-4-8407-5468-2

ソクラテスが贈る若手薬剤師研修テキスト: ~薬局薬剤師として輝くために~
著者:山本雄一郎
頁数:88頁
定価:1,650円(税込) 
発刊:2024年11月
ISBN-13 ‏ : ‎ 979-8345515259

一覧に戻る