薬剤師の鈴木です。
最近、複数の若手薬剤師から自家製剤加算の算定に関して質問を受けることがありました。
自家製剤加算の算定は、当サイトにおいてもこちらのクイズのページで閲覧数が多いようなトピックであり、疑問に感じている方が多いものと思われます。
したがって自分の復習がてら、新人薬剤師に必要なレベルの情報という視点で、弊社MCSの社内セミナーでもテーマとして取り上げました。本ブログでは、その際の内容をまとめてみたいと思います。
自家製剤加算、算定要件の概要
まずは自家製剤加算の算定要件のポイントから復習したいと思います。
厚労省の資料によると、そもそも自家製剤とは
「個々の患者に対し市販されている医薬品の剤形では対応できない場合に、医師の指示に基づき、容易に服用できるよう調剤上の特殊な技術工夫(安定剤、溶解補助剤、懸濁剤等必要と認められる添加剤の使用、ろ過、加温、滅菌等)を行った次のような場合」
とされています。
- 錠剤を粉砕し散剤とすること
- 主薬を溶解して点眼剤を無菌に製すること
- 主薬に基剤を加えて坐剤とすること
簡単にいうと、剤形が変わるような調剤をした場合に算定できる点数ということです。
続いて、算定できる点数ですが、自家製剤加算は、
「次の薬剤を自家製剤の上調剤した場合に、1調剤につき(イの( 1 )に掲げる場合にあっては、投与日数が7又はその端数を増すごとに)、それぞれ次の点数(予製剤による場合はそれぞれ次に掲げる点数の100分の20に相当する点数)を各区分の所定点数に加算する」
とされています。
イ 内服薬及び屯服薬
( 1 ) 錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の内服薬・・・20点
( 2 ) 錠剤、丸剤、カプセル剤、散剤、顆粒剤又はエキス剤の屯服薬・・・90点
( 3 ) 液剤・・・45点
ロ 外用薬
( 1 ) 錠剤、トローチ剤、軟・硬膏剤、パップ剤、リニメント剤、坐剤・・・90点
( 2 ) 点眼剤、点鼻・点耳剤、浣腸剤・・・75点
( 3 ) 液剤・・・45点
ただし、次の項目に該当する場合は算定できません。
- 調剤した医薬品と同一剤形および同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合
- 用時溶解して使用することとされている医薬品を交付時に溶解した場合
また、その他に知っておくべきこととしては下記のようなものがあります。
- 割線のある錠剤を医師の指示に基づき分割した場合は、上記イ(1)の錠剤として算定する。ただし分割した医薬品と同一規格を有する医薬品が薬価基準に収載されている場合は算定できない。
- 自家製剤加算と計量混合調剤加算は「同一の調剤」では算定できない。※ここでいう同一の調剤とは「服用時点および日数が同じもの」をいいます
- 通常、成人または6歳以上の小児に対して矯味剤等を加える必要がない薬剤を6歳未満の乳幼児に対して調剤する場合において、薬剤師が必要性を認めて、処方医の了解を得た後で、単に矯味剤等を加えて製剤した場合であっても算定できる。
- 自家製剤を行った場合には、賦形剤の名称、分量等を含め製剤工程を調剤録等に記載すること
- 自家製剤は、医薬品の特性を十分理解し、薬学的に問題ないと判断される場合に限り行うこと
自家製剤加算のケーススタディ
算定要件をみているだけだとなんとなくしかわからないと思うので、いくつかのケースを見ることでしっかりと考え方を身につけましょう。
これはカロナール錠200を半錠にするケースですが、カロナール錠200には「割線」があり、また100mgの錠剤が存在しないため、自家製剤加算を算定することができます。
割線の有無は添付文書の「組成・性状」の項目をみて「割線入り」と記載されているかどうかで判断します。

カロナール錠添付文書
半錠にした場合は、錠剤に「半錠に相当する規格」の医薬品があるかを確認しますが、この場合はジェネリック医薬品を含めて確認しなくてはいけないので注意が必要です。このケースではアセトアミノフェンを100mg含む錠剤が薬価基準に収載されているかどうかを確認します。
カロナールに100mgの規格があるかどうかではないのがポイントです。
また、割線を利用し半錠にした場合は、散剤が薬価基準に収載されているかどうかは、関係ありません。カロナールには細粒や原末がありますが、今回のケースでは関係ないので、自家製剤加算を算定できます。
ケース1との違いは1回の服用量だけです。ケース2では1回1.5錠になるように調剤したとします。この場合、カロナール錠に「300mg」の規格が薬価収載されているため算定できません。
アマリールやそのジェネリックに1.5mgの規格は存在せず、3mg錠には割線があるため算定できます。
0.5mgと1mgの規格が存在するため、0.5と1mgを組み合わせれば、つまり各1錠で飲めば1.5mgになるんだから自家製剤加算は算定できないように思えるかもしれません。しかし、実はこのケースでは算定できるというQ&Aがでています。
ポイントは自家製剤として作り上げたものと同じ規格が薬価基準に収載されているかが判断基準であり、組み合わせることまでは考えなくていいのです。なので、今回のケースでは1.5mgの規格が存在しないので、自家製剤加算を算定できることになります。
リフレックス錠にはジェネリックを含め7.5mgの規格はなく、15mg錠には真ん中に線があるので自家製剤加算を算定できそうに思えますが、実は算定できません。なぜなら添付文書をみると「割線入り」と記載されていないからです。

リフレックス錠添付文書
この場合は割線用模様、つまり割線に見えるけどただのデザインと考えるため、半錠にしても自家製剤加算を算定することはできないんです。
リフレックスのように割線用模様がある医薬品は複数あるため、半錠にして自家製剤加算を算定しようとする際には、必ず添付文書を確認しましょう。この場合、粉砕し、散剤として調剤した場合は自家製剤加算を算定することができます(ミルタザピンには散剤がない)。
プレドニゾロン錠「タケダ」には割線があり、かつ2.5mgの規格はありません。なので、自家製剤加算を算定できるように思えますが、算定できません。
たしかに「タケダ」には2.5mgはありませんが、プレドニゾロン錠「NP」2.5mgが薬価収載されており算定要件を満たしていないからです。同一成分を含有する他メーカー医薬品も確認するようにしてください。
B液 5mL /朝夕食後 5日分(混合する)
(A、B両成分を含有する液剤は薬価基準に収載されておらず、ABの混合は問題ないものとする)
この場合、Aドライシロップからみると「散剤」だったものがB液と混合されることで、剤形が散剤から液剤へ変わっているので自家製剤加算を算定できる気がしますが、これに関してはQ&Aで算定できないとの判断が示されています。
「ドライシロップ」という点がポイントで、ドライシロップはもともと水に溶かして液剤として服用するものだから、他の液剤と混ぜたときは「液剤と液剤を混ぜた」と考えなさいとのことです。なので、このケースでは計量混合調剤加算を算定します。
ちなみに、このケースでAがドライシロップではなく、「小児用細粒」という名称だった場合は自家製剤加算が算定できます。
D錠 2錠 / 寝る前 14日分(すべて粉砕し混合する)
(C、Dにはジェネリックを含め散剤は存在せず、混合に問題ないものとする)
このケースは、錠剤から散剤に剤形が変わっているし、CやDには散剤がないということなので自家製剤加算を算定できそうな気はしますが、算定できません。
このケースでポイントとなるのは、なぜ粉砕するか?という理由です。1回に服用する錠数は、C錠は1錠、D錠は2錠です。普通なら粉砕する必要はない処方です。この場合、粉砕する理由として考えられるのは「錠剤がのめないから」だと思われます。なので、算定するのは自家製剤加算ではなく「嚥下困難者用製剤加算」になります。
算定要件の概要で触れましたが、自家製剤加算は「市販されている医薬品の剤形では対応できない場合」に算定するものです。粉砕したらとれる点数ではないので注意しましょう。
パントシン散20% 2g/寝る前 28日分(混合する)
マイスリー錠5mg 0.5錠/寝る前 28日分(半錠する)
このケースではマイスリーの半錠で自家製剤加算の算定要件を満たしています。また、酸化マグネシウムとパントシン散の混合で計量混合調剤加算の算定要件を満たしています。
自家製剤加算と計量混合調剤加算を同一調剤で算定することはできないため、このケースではどちらか一方の加算を算定することになりますが、点数が高い自家製剤加算を算定するのが一般的です。
もし、酸化マグネシウムとパントシン散の処方日数が28日分で、マイスリーの処方日数が30日分のように処方日数が異なっている場合は「調剤」が異なるため計量混合調剤加算と自家製剤加算をそれぞれ算定することができます。
※ここでいう同一の調剤とは「服用時点および日数が同じもの」をいいます。
算定にあたっての注意事項
地域によって判断がことなる場合があります。
例えば、錠剤を粉砕して自家製剤加算を算定する場合、ある地域では何号の篩を使用したのかまで調剤録や薬歴に記載がないと個別指導で算定不可と判断されることがあります。その一方で、賦形した賦形剤の名称と量が記載されていれば算定可能とされている地域もあります。
この辺りはご自身が勤務されている地域の基準に合わせて対応してください。
まとめ
加算などの調剤報酬に関しては医療事務の方が判断してレセコンに入力してくれているとケースがあると思います。特に新人のころ、または病院薬剤師から薬局へ転職したばかりのころはお任せになってしまうことがあります。
しかし、調剤報酬の算定に関しても最終的な責任は調剤した薬剤師がおうべきものです。よくわからないまま、何となくで算定してしまうことがないようにしっかりと勉強し、自信をもって算定しましょう。