薬剤師のボーナス、みんな平均いくら貰ってるの? コロナの影響で減ったりしてる?

薬剤師の星谷です。

さて、もうすぐ夏のボーナス(賞与)の支給時期ですね。

こちらの記事でも書きましたが、薬局業界も他の業界の例に漏れず新型コロナウイルスの影響を多分に受けており、来局数が減ったことで業績が悪化してしまった企業が多く出ています。そんな中、今年夏のボーナスが昨年よりも減額されてしまい、これを期に転職を検討しているという薬剤師の方もいらっしゃるのではないでしょうか?

そもそもボーナスというのは業績が悪化したら減るのが普通なのですが、若い薬剤師の方だと、他の企業がどのようにボーナスを支給しているのかとか、どれくらいが普通なのかという話は、あまり聞く機会がないんじゃないかと思います。

今回はそんな薬剤師業界のボーナス事情について、調剤薬局の元人事の視点から、主に20代の薬剤師の方が知っていると役立つ情報をお伝えしたいと思います。

薬剤師のボーナス、みんな平均いくら貰ってる?

統計から見る薬剤師のボーナス

というわけで、まずは「みんなどれくらいボーナスもらってるの?」というのを統計から見てみましょう。

比較のために、全産業の賞与から見てみます。賃金に関する統計というのは厚生労働省がいろいろな形で取っているわけなのですが、夏季賞与については「毎月勤労統計調査」の9月速報で全産業の平均値を見ることができます。2020年のものは現6月時点ではまだ発表されていないので、最新の2019年9月速報を見てみると、


2019年、夏季賞与の全産業平均は381,520円(前年比1.4%減)でした。

次は薬剤師に絞って見てみます。職種ごとの賃金は「賃金構造基本統計調査」で見ることができます。これによると、2019年の薬剤師の年間賞与は平均で83万3,300円(前年比4.9%減)でした。通常は夏と冬の2回に分けて賞与が支払われますので、この半分くらい、およそ41万円が2019年薬剤師の夏季賞与平均額だったと考えられます。

これだけでも分かると思うのですが、薬剤師の賞与って、別に一般職と比較してそこまで高いわけではないんですよね。

そして更に細かく、男女別、年齢別、企業規模別に見てみましょう。以下は政府統計ポータルサイト「e-Stat」賃金構造基本統計調査・職種別第2表のキャプチャです。(数字の単位はすべて千円)

2019年、薬剤師賞与平均 [男女別、年齢別、企業規模別]


男女別に見ると、男性薬剤師の賞与平均が88万6,800円なのに対し、女性薬剤師は79万7,800円と、男性のほうが9万円弱多いようです。

年齢別(≒経験年数別)では、微増ではありますが60歳までは年齢が上がるほど賞与も増えていることがわかります。

企業規模別では特段、大きな差が見られませんが、100人未満の小規模企業がわずかに賞与額が多い傾向が見られます。

ボーナスを出す側の人事の視点

私個人的な所感ですが、ここ数年で薬剤師のボーナスの額が大きく変わっているという印象は無いです。私の身近な薬剤師でボーナスが減ったという話も聞かないですし、調剤報酬改定を踏まえても、年々ボーナスが減っているという話は聞かないです。

ただ、これがコロナでどうなるか?はまだ不透明な状況です。

これは予想になりますが、コロナの影響を受けたとしても、直近で薬剤師のボーナスの状況が大きく変わることは無いと私は思っています。なぜかというと、薬剤師人材の流出を防ぐために、多少無理をしてでも例年と変わらない額で頑張ってボーナスを出しておきたいという経営や人事の思惑があるからです。

現場ではたらく薬剤師としては基本、賞与の額が下がると「うちの会社ヤバい」とか、「潰れそうなのかも?」みたいな認識になってしまいます。すると当然、転職を考えますよね。会社としてはそれを懸念して、けっこう無理をして

「厳しい状態ですが、みなさんもコロナの中で頑張って頂いたので、今回は前年度と同額で賞与を維持します」

という会社さんが多いのではないかと予想しています。
とはいえ、そうも言っていられない経営状況の薬局に関しては普通に減るとは思いますが。

そもそもボーナスというのは、例えば利益が大きく出たときに「どうせ税金で持っていかれるなら社員に還元しよう」とか、逆に経営が厳しくなったときに削りやすくしておこうといった、いわば調整弁のような役割を果たしているものです。

なので会社の業績が悪化したら賞与が下がるというのはごく普通のことで、一般職の方からすると「そりゃそうだよね」という感じかと思いますが、これが薬剤師はというと

「えー!? 何でボーナス下がるの? 業務量、変わってないし、私たちがやってること変わらないのに。むしろ今までよりもコロナ対応とか、ジェネリック云々とかで大変なんですけど。それで減額するってどういうこと? 辞めまーす!」

という感じなので……これを危惧して、なるべく人事側としても経営陣側としても、人材の流出を防ぐために頑張ってボーナスを出しておきたい、というのが建前と本音みたいなところかなと。

なお、この状況で前年と変わらない、あるいはちょっと多めのボーナスが貰えたということは、それだけ勤め先の会社にまだ体力があるのだという評価は一定、できますね。

私のボーナス、安すぎ……?と思ったら

コロナで下がった、とかではなく、単にまわりと比較して「私そんなにボーナス貰ってないんだけど、なんで?」という方もいらっしゃると思います。

初歩的な内容ではあるんですが、ここでは「業績が下がった」以外で、こういう場合はボーナスは普通あんまり貰えないんですよという代表的なケースを2つ紹介します。

入社して間もない場合

例えば、新卒入社1年目の夏だったり、あるいは転職してまだ半年経過していないという場合、ボーナスは通常よりもかなり少なくなるケースが多いです。

これは、ボーナスに「査定期間」というものがあるからです。

ボーナスというのはもともと、従業員の仕事に対する評価を考慮して支給するという性格も帯びているので、通常は、夏と冬のボーナスそれぞれに「評価対象となる期間」が定められています。

よくあるのが、夏ボーナスの支給が7月、冬ボーナスの支給が12月のときに、夏ボーナスの査定期間が前年の10月〜今年の3月。冬ボーナスの査定期間が今年の4月〜9月、というパターンです。これだと、4月入社の新卒は最初の夏ボーナスの査定期間に仕事をしていないので、最初の夏ボーナスは普通は貰えないことになります。

しかし先に述べたとおり、ボーナス時期なのにボーナスが貰えなかったり、同僚よりもボーナスが低かったりすると、就業意欲が削がれたり、辞めたくなっちゃったりすることがある、と。これを避けるために、新卒にも最初の夏ボーナスをほんの少しだけ出すという会社が多いのです。額としては2,3万とか、ごくわずかですが。振込でなく「寸志」と書かれたのし袋に入れて手渡しされるケースもあります。

大手ドラッグストアや大手調剤薬局は、新卒の1回目の夏ボーナスでもだいたい出しているはずです。

これは中途入社の場合も同じです。例えば、4月1日在籍を起算として7月末の賞与を支給、8月1日在籍を起算として12月のボーナスを支給、という会社があったとします。この場合、6月入社だと夏のボーナスは出ませんし、9月・10月入社だと冬のボーナスが出ません。

しかし、例えば大手ドラッグの中には、6月30日に在籍していさえすれば7月のボーナスの支給対象に入るところもあります。もちろん、満額ではなく在籍期間に応じて減額されますが、この場合6月入社の転職者でもボーナスがもらえるということになります。

というわけで、入社して間もない場合は通常はボーナスが貰えないのですが、多くの企業ではそれでも少しだけ出しています。それが人によっては、まわりよりもかなり額が少ないように見えてしまうこともあるのですが、実はそれが普通ですよ、という話です。

基本給が低い場合

ボーナスの額は、一般的に「基本給 × ○ヶ月」という形で計算されます。この「○ヶ月」の部分は会社によって異なりますが、1回の支給あたりだいたい2ヶ月とか、2.5ヶ月という会社が多いと思います。

問題は「基本給」のほうで、同じ額面に対して基本給が少ないと、そのぶんボーナスの額も少なくなります。

例えば、額面30万円に対して基本給20万+手当10万の会社と、基本給10万+手当20万の会社があったとして、仮に計算式が同じなら、基本給20万円の会社のほうがボーナスが倍多く出ることになります。ただ実際にはここまで極端に差が出ることは少なく、月給が多いのでその分ボーナスを少なくしたり、逆にボーナスを多くして代わりに月給を少なくしたりしているケースが多いかと思います。

なお、今はあまりないのですが、ドラッグストアだといわゆる年俸制を敷いている会社もあり、そもそも賞与という概念がなかったりします。

例えば、新卒の薬剤師で年俸600万円、さらに半年後すぐに+60万円アップできるチャンスがあるドラッグストアがあるとする。これだけ見ると、すごく良い条件のように見えますよね。ところが、これが実は1日の労働時間が8時間ではなく9時間(1時間分の残業代込み)で、かつ半年後の年収アップは相当に実現が難しいものだった場合、どうでしょうか。ちょっと微妙になってきませんか?

このように、給与というのは色々な見え方や見せ方があるので、きちんとまとめたり分解したりした上で比較しないと、判断を誤ります。

ボーナスの額のみを比較して一喜一憂するのではなく、年間の総支給額や、1日あたり、1時間あたりの支給額を計算したうえで比較していただくと、より有意義かと思いますね。

まとめ

ということでまとめると、直近で薬剤師のボーナスが大きく変わるということはおそらく無いと思いますが、とはいえ不況のときはボーナスが減るのは普通なので、それだけに一喜一憂しない。減額されたならまずは真摯にその事実を受け止めて、薬剤師の業界がそうなのだというところを認識するべきかな、と。

昨今のコロナ不況はリーマンショックを超えるという評価もあり、それくらい状況が状況ですので。

大手夏ボーナス、コロナで6%減 リーマン・ショック以来の下落率 | 共同通信

経団連が17日発表した大手企業の夏の賞与・一時金(ボーナス)の第1回集計によると、組合員の平均妥結額…

ちなみに「ドラッグストアってコロナで業績が良かったりするんですか?」というご質問もよくいただくのですが、回答としては特に良くはないです。

こちらの記事でも書いているんですが、ドラッグだからコロナで伸びているということは特になく、調剤専門と同様に来局する患者さんの数は減っていますから、基本的には調剤だろうが併設ドラッグだろうが、売上は減っています。そして今はドラッグも各社、これからのより一層の不景気に備えて引き締めをしているので、調剤からドラッグに転職したから先行きが明るい、ということはたぶんない状況です。

ですので今は慌てて転職を考えるよりも、今の職場でできる範囲で仕事のスキルを伸ばしたり、自分の仕事を掘り下げる努力をしたほうがいいんじゃないかなと、個人的には思います。

それでもやっぱり転職を考えるという話であれば、先にお伝えしたとおり給与にはいろいろな見せ方があるので、それに惑わされないようまずはきちんと雇用条件なり、募集要項なりを読み解いていく必要があります。

そのあたりがもし気になるようでしたら、弊社お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください!

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