薬剤師のための円満退職のポイント。退職理由の上手な伝え方など

薬剤師の星谷です。

今回は、薬剤師の退職にまつわる話です。おそらくこの記事にたどり着く方は、すでに現職を辞めるお考えを持っているものの、ちゃんと辞められるのかな、すごい引き止めに合うんじゃないかな?なんて伝えれば良いのかな?などなどでお悩みの薬剤師ではないかと思います。

分かります。退職を切り出すのって、勇気がいるんですよね……。

今回は、薬剤師が円満退職をするためのコツについてお伝えしたいと思います。

トラブルなく退職するためのポイント

基本的に「辞められない」ということは起こらないのです。

日本は雇用される側が法律でかなり手厚く保護されていて、退職する旨を決められた期日より前に伝えれば、雇用する側はそれを拒否できません。極端な話、「出社は今日まで。明日から有給消化でそのまま退職します」というのも、法的には何の問題もなくできてしまいます。

法律的に正しい「今日で辞めます」の手順 労働者の「辞める権利」は強い

広がる人手不足により、「退職を申し入れても会社が辞めされてくれない」というトラブルが増えている。憲法で「職業選択の自由」が保障されているように、労働者は理由の如何にかかわらず、原則は自由に会社を辞め…


しかし、です。退職自体は問題なくできたとしても、その後の転職でトラブルになることは有り得ます。また、特に考えなく退職理由を伝えてしまったことで、退職交渉の際に言いくるめられてしまい、けっきょく転職できなかったという事例もあるようです。

そういった退職にまつわる不慮のトラブルに合わないための方法についてお伝えします。

半端な気持ちで退職を切り出さない

退職申請は一度切り出してしまうと、無かったことにはできません。職場に退職意思を伝える前に、本当に転職するべきなのか?改めて考えてみてください。そして「絶対に退職する」という意思が固まってから、退職を切り出しましょう。間違っても「退職しようかどうか迷っている」ような状態で、退職を切り出してはいけません。

なぜなら、自分の意思が固まっていないと、引き止めがあった場合に迷いが生じてしまうからです。

管理職は、基本的には「辞めてほしくない」と思っています。そりゃあそうですよね、新規に採用する場合、人材紹介会社経由だと100万円を超える追加費用が発生することもありますから。

また、退職交渉の経験もあなたよりもよっぽど豊富です。同じようなケースを幾度となく経験しています。そして、あなたの曖昧な気持ちを見抜いて、様々な引き止め策を使って考え直すように説得してきます。「よくやってくれていたので非常に期待していた。何とか会社に残ってほしい。」このような思いがけない評価の言葉をもらって、つい気持ちが揺らいでしまうかもしれません。

そして、退職交渉の結果職場に残ったとしても、そのとき退職しようとした事実はまず、何らかの形でまわりに知られてしまいます。それによって職場に居づらくなり、より不本意な形で退職することになるかも知れません。

半端な気持ちで転職しない

中途半端な考えで退職を切り出すもう1つの弊害は、新しい職場で何か嫌なことがあった時に、また「会社を辞めたい」とくじけてしまいやすくなることです。

会社を辞めるのは簡単なことですが、転職するのはそんなに簡単ではありません。

例えばこれは弊社女性スタッフの過去事例ですが、彼女は初めての転職のとき、スギ薬局で6年間はたらいて、ある程度自分の実績というか、薬剤師としての自分に「そこそこ行けるだろう」という自負を持っていました。そして転職先は調剤薬局ということで、そんなに仕事の内容は変わらないだろうと想像して、気楽に構えていました。

しかしいざ転職してみると、スギ薬局で経験していた面のドラッグと、転職先の大型総合門前ではまったくやり方が違う。例えば、そのとき彼女はずっと紙薬歴しか使っていませんでしたが、それがデジ薬歴になったり。レセコン一つ違うのでもかなりストレスがあり、薬の配置も、扱っているジェネリックの銘柄も、在庫管理のやり方も、すべてにおいて指針がまったく違うので、慣れるまではかなり大変だったそうです。そして、想像していたよりもうまくできなかった自分にもショックを受けたとのことでした。

ということで、このようなこともあるのだと心得ていただき、辞めても後悔しないという自信ができてから、退職を切り出していただくことをおすすめします。

退職理由はなるべくポジティブな内容にする

退職理由の伝え方は、正直に話した方がいいのか、どうしたら納得してもらえるか?など、転職を考える薬剤師にとっても頭を悩ませるポイントかと思います。

退職を決意したということは、会社や職場への不満があるケースが多いわけですが、それをそのまま退職理由として会社側に伝えるのはやめましょう。

なぜなら、「その辞めたい理由を解消すれば残ってくれる」と会社側が考え、具体的な改善策を提示しながら説得してくるからです。例えば、給与が不満なら上げる、仕事がきついなら勤務時間を見直す、人間関係が辛いなら店舗異動する、など。それであなたが納得するなら職場に残るという選択肢もありますが、改善内容を示された以上、本当は辞めたいのに「辞めたい」と言い切れなくなり、ズルズルと辞められなくなることもあるのです。

よって、もし退職したいという固い決心ができているなら、会社には、引き止めることができないポジティブな理由を伝えるのがポイントです。

たとえば、

ここではできない、やりたい仕事がある

環境を変えて学びたい

もっと大きな会社を経験したい

今よりも地域密着の小規模薬局で働きたい

など。

退職後の未来がはっきりと見えていることを示し、あなたの前向きな覚悟が伝われば、会社としても「そう言わずにウチに残ってくれよ」とは言いづらくなります。

なお、どうしてもポジティブな退職理由を作れない場合、嘘を付くという手も一応、、、、あります。「親の介護が必要になった」など。ただ原則、辞めておきましょう。嘘がバレたときの心象がものすごく悪くなるからです。

また、このとき「後任が決まるまで待ってほしい」と相談されることもあります。しかし、何もしないとこの後任というのはいつまで経っても決まりません。そこで、新しい就業先から内定をもらって入社日が決まっているのであれば「新しい職場から○月○日入社ということでもう内定を貰っているので……」と伝えてしまいましょう。

波風を立てて辞めない

これ、信じられない方も居ると思うんですが、退職することが決まったあとで、勤務態度がものすごく悪くなる方がたまにいらっしゃいます。

俺、辞めてやるんだぜ、と吹聴する

モノを蹴ったり、投げたりする

辞めるからその仕事はしない、などと言う

常識のある方は当然こんなことはしないと思うんですが、ここまでいかなくても、退職が決まってちょっと気持ちが緩んだり、浮ついたりすることってあると思っていて。で、そういうのって周りが敏感にキャッチしちゃうんですよね……。

これの何が問題かというと、辞めるときの言動って、みんなの記憶にすごく残りやすいんです。

そして狭い業界なので、元いた会社の人とまたどこかで一緒に働くことになることが普通にあります。そうすると、気持ちよく働けなくなったり、最悪「あの人は採用しないほうが良い」といって転職が上手くいかなくなる可能性もあります。もともと違う会社だったのが、合併して同じ会社になった、とか。同じ薬剤師会に所属していて、前職と現職の上が仲良しだった、とか。そういうのがいくらでもあるわけです。

前項で、転職理由をポジティブにしたり、嘘をつかないほうが良いとお伝えしたのは、このあたりも理由としてあります。

なので当たり前だと思うんですが、立つ鳥なんとかと言われる通りで、波風を立てずに気持ちよく辞めるようにしましょう。

退職を伝える時期は、なるべく早めに

退職の意思を伝える時期ですが、まずは会社の退職日に関する就業規則を確認しましょう。なお民法上の規定では、正規雇用の場合は2週間前までに伝えれば良いことになっていますが、通常は引継ぎに必要な期間を考慮して、退職希望日の1〜2ヵ月前に申し出るのが望ましいです。

薬剤師の現場は基本、人手不足のため、繁忙期はできるだけ避けた方がよいでしょう。ただし、内定先が欠員補充などで急ぎ入社してほしいこともあるため、やむを得ず忙しい時期に退職する場合は、早めに退職意思を伝えて後任の調整を進めてもらいます。

円満退職を目指すのなら、「もう辞めるので後のことは関係ない」と考えるのではなく、上司や同僚に大きな負担をかけないよう配慮することが大切です。

まとめ

というわけで、まとめると下記のようになります。

  • 引き止めに合ったり、転職先で嫌なことがあっても気持ちが揺らがないよう、覚悟を持って退職の意志を伝えよう
  • 引き止めにくくするために、退職理由はポジティブな内容にしておこう
  • 狭い業界なので、また一緒に働く可能性を考慮して気持ちよく辞めよう

辞めたいということは、いまの職場に何かしら不満があって辞めるというケースが大半かと思うわけですが、それでもかつての同僚とまた一緒に働くことになる可能性が十分にあることを考えると、やはり円満に退職するというのは大事ですね。

どうかヤケにならず、有終の美を飾っていただきたいと思います。

なお、どうしてもポジティブな退職理由が作れないとか、あるいは絶対に辞めさせてくれなそう……など、薬剤師の退職にまつわるご相談も随時受け付けておりますので、弊社お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください!

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