調剤薬局での薬剤師の働き方。総合病院門前、クリニック門前、面応需、それぞれどう違う?

薬剤師の星谷です。

薬剤師の勤務先として最もオーソドックスな選択肢である「調剤薬局」ですが、同じ調剤薬局でも、タイプによって働き方に違いがあることはご存じでしょうか?

具体的にはタイトルのとおり、総合病院門前、クリニック門前、面分業の3つに分けられます。

キャディカル薬剤師のアドバイザーとして求職者様とお話をしていると、それぞれの特徴について聞かれることが多いので、今回はその回答としてお伝えしていることを書いてみたいと思います。

面応需の薬局

「面」というのは「点」(=門前)に対応する呼びかたで、要は特定の病院やクリニックに限らずに処方せんを受け付けている調剤薬局のことです。全体の3割くらいが面にあたり、調剤併設ドラッグストアが中心になります。

私の薬剤師として最初の就職先は、調剤併設ドラッグチェーンの「スギ薬局」でした。もともとセルフメディケーションや未病も含めた幅広い業務に興味があったので、調剤のみの薬局とか、病院については就職先として当初はあまり考えていませんでした。

実際に働いてみると、面なので本当に様々な病院、様々な科目、様々な書き方の処方箋がたくさん来ました。近所の小さいクリニックさんからも来ますし、町の総合病院からも来ますし、隣の県の有名な病院からも来ました。

ただ、門前タイプの店舗以外は集中する時間はあまりなかったイメージです。もちろん、医療機関が開いている時間帯はそれなりに来るんですが、夜にもパラパラ来ますし、日曜日も開いていたので、金曜日にFAXを送って日曜日に取りに来るとか、そんな患者さんもけっこういました。客層も偏りなく、子どもからお年寄りまで幅広くという感じで、疾患も十人十色でした。

面の薬局は、患者との関係構築がしやすい

私が面でいちばん良かったと思うのは、患者さんと密な関係が作りやすかったところです。

通常の調剤薬局だと、基本的には処方箋を持っているときにしか患者さんと会えないですよね。これが調剤併設ドラッグだと、日常の買い物でも来てくれるので、会う回数が自然と多くなります。するとお薬以外の生活に関する会話もできる機会が増えてきて、患者さんの生活に入り込みやすかったです。

面の調剤併設ドラッグは、営業時間が長い

面のデメリットですが、一番はドラッグストアだと勤務時間が22時とか夜遅くになったり、土日になったりすることがある点です。当たり前ですが、夜遅くまで働くと疲れます。あと、勉強会の類に参加しにくくなります。薬剤師会主催のものとか、メーカー主催のものって19時くらいにスタートするのが多いんですよね。

また、人と休日の予定を合わせるのも少し難しくなります。固定休ではなく、シフト勤務のため、翌月のシフトが出るまで予定を入れられないからです。土日休みの友だちからの遊びのお誘いは、断ることしばしばでした。


あとキャリアアドバイザーとして求職者対応をしているときも、パート土日休みで希望されている方にその理由を伺うとだいたいの方が「子供の学校行事のため」と言われます。土日夜間を含んだシフト制で勤務するのはお子さんがいる方には難しい働き方かもしれません。

最近では時短制度の拡充等、子育てする女性に優しい制度を導入する大手企業が増えていますが、時短制度の利用は“勤続1年”が必要な場合がほとんどですので、転職して直ぐに利用できない場合が多いことには注意が必要です。

総合病院の門前薬局

大学病院など、大規模な病院の近くにある調剤薬局のことです。全体の2割強を占めます。

門前薬局では普通のことですが、日曜日が必ず休みで、あとは土曜日かどこか平日が1日お休み。固定休があるのは予定が組みやすく、やはり嬉しいですよね。

総合病院門前では、病院の午後の受付がだいたい14時くらいまでなので、午前中から15時くらいまでがものすご〜く忙しくて、あとは何事もなかったように静かになる、みたいな、かなり波のある働き方になります。17時をすぎるとほぼ患者さんが来ない、という日もめずらしくありません。

あと、集中して大量にやってくる処方箋を効率よくさばくために、役割分担が細かく分けられているのも総合病院門前の特徴です。面の薬局だと、調剤して、監査して、投薬して、レセコン打って、というのを1人で全部やることもあるので、この点はだいぶ異なりますね。

例えば、今日は私は調剤担当、明日は投薬担当。今日は1番カウンターは誰さん、2番カウンターは誰さん、みたいなのをシフトに全部組み込んで、システマチックに回す。ずっと同じ作業をやらせるとミスも出てくるので、午前と午後でちょっと違うことをさせたり。あと粉係は1日、朝から晩までずーっと粉作ってたり。そんな感じです。

総合病院門前は、定時終わり土日休みが多い

良いところは、やはり定時に終わることが多いところですね。ワークライフバランスは非常に取りやすいと思います。土日休みのところも多いので、夫婦で休みを合わせたいという場合にも非常に良いかと。

あと処方内容については、総合病院ということでやはり重病の方が来るので、こんな病気があって、こんな症状が出るんだー、という知識習得の場にはなりました。病院に片足を突っ込んでいる感じを味わえます。

総合病院門前は、処方箋が多すぎて殺伐としやすい

一方で、特定の時間帯に処方箋が集中して来るので、その間の職場が殺伐とした雰囲気になりやすいところですね。

総合病院の患者さんというのは、人によっては病院で2時間くらい待たされて、加えて薬局でも1時間くらい待たされて、なんて方もザラにいらっしゃいます。で、近くに飲食店もないから、薬局に人があふれて、どっかから椅子出しますか?みたいな状態になったり。


当然、かなりのスピードを求められます。患者さん一人ひとりに丁寧な対応をするというのが難しい場合が多いので、クレームも出やすいです。

しかも総合病院なので、処方自体も重いものが多いです。難病指定の方とか、一包化や粉砕が必要な方とかがたくさん来ます。時間も掛かります。そういったものも含めて、正確に、間違いなく、素早く、仕事をこなす必要があります。そりゃあ、殺伐としますよねぇ……。

クリニック門前(マンツーマン)

クリニックや、小規模な個人病院などの近くにある調剤薬局のことです。「マンツーマン」と言ったりもします。割合としては3つのうちで最も多く、4割強を占めます。薬局の専門性、休みの曜日や開局時間などは、そのクリニックに完全に左右されます。

ビルの1階に薬局が入っていて、上の階や隣のビルにクリニックが入っており、そのクリニックはご夫婦経営のようなパターンがこのタイプに該当します。

クリニック門前の特徴は、医療機関との距離が近くなりやすい点です。たとえば「今日は患者さん、あと2人です」ってわざわざ教えてくれたり。あと、医療事務さんと仲良くなってお菓子やお花をおすそ分けしてもらったり。医療機関とのこういうやり取りは、面や総合門前の薬局ではあまり無いので、嬉しい関係ですよね。

クリニック門前は、調剤未経験でも慣れやすい

クリニック門前がまず良いと思うのは、調剤未経験の方とか、ブランクありの方でも仕事に慣れやすいという点ですね。実際に病院経験しかない薬剤師さんが転職してきても、すぐに慣れていただけた、という事例がありました。

面の薬局だと1人薬剤師になってしまう可能性が往々にしてありますし、総合病院門前は1人にはならないもののスピードが求められます。調剤未経験の薬剤師さんが、複数人体制で誰かに助けてもらいやすい環境を選ぶという意味で、クリニック門前はおすすめです。診療科目に応じて扱う薬品数が絞られるというのも、調剤に慣れていない方にとってはメリットですね。

あと、クリニックの先生と良好な関係を築けていると、薬局の味方をしてくれるのも良い点ですね。例えば「この薬ちょっと今日……もう終わりですw」とか「これ今、在庫めっちゃあるんですけど」みたいなことを先生にお伝えして、先生が薬のご案内をするときにその辺りを考慮していただいたりもできます。

ただこれってコインの裏表で、逆に嫌われたら終わりなんですけどね。「あの薬局はクソだ」みたいなクレームをなぜかクリニックの先生が受けちゃうこともあって、そうすると「おい薬局、何やってんだ!!!」ってダイレクトに雷が落ちてきます。

クリニック門前は、診察が長引くと終業が遅くなる

クリニック門前の嫌なところは、クリニックが遅くまで診察していたら、薬局の終業時間も遅くしないといけないところですね。あと休みもクリニックと合わせないといけないので、クリニック門前で土日が両方休みの薬局は少ないです。

たとえば、メンタルクリニック門前の場合、患者さんが精神不安定で、問診で長くお話をしないと済まないという方がよくいらっしゃいます。すると夜9時過ぎとか、場合によっては夜10時過ぎまで診察が長引くこともあって、薬局も誰かが待ってないといけない、と。それでいてけっきょく患者さんに薬は出なくて、薬局の薬剤師は待ち損、みたいなことも事例として伺うことがあります。まあ、これはメンタル独特だとも思いますが。


これ、法律上は連携しているわけではないので、必ずしもクリニックの終わりを薬局が待つ必要って無いんです。ただ、とはいえ閉められないですよね。そこの処方がメインですし。先生にも「患者さん終わるまで開けといて」って頼まれますし。

加えて、昼休憩が3時間とかかなり長いクリニックもけっこうあって、そうすると薬局もそれに合わせて休憩を長く取る必要があるので、それが嫌だという方も一定いらっしゃいます。

あとよく言われるクリニック門前のデメリットとして、眼科とか皮膚科が特にそうですが、単科で同じ種類の薬ばかり扱っていると「扱える薬の数が少ない」という評価になって、その後の転職で若干不利になりやすいというのがありますね。

まとめ

こうやって書いてみて改めて思いましたが、やっぱりけっこう違いますよね、3つとも。

ちなみに、仮に私自身が現場の薬剤師として次に働くとしたら、やはり面対応がいいですね。いちばん患者さんと近くて、感謝してもらいやすいというか、自分がその人のためになったというのがいちばん実感できるのが、面だと思うからです。

これから調剤薬局に転職をしようとしている方は、ご自身が今後どういう経験を積んでいきたいかをよく考えた上で、転職先を検討していただければと思います。
お困りのことがありましたら弊社お問い合わせフォームからお気軽にご相談ください!

\ SHARE /